Rec. on 2015.01.19
Improvisation on Am
自作の笛で演奏
北米大陸のインディアン、ネイティブ・アメリカンと呼ばれる人々が、古来愛好してきた木製の縦笛。若い男たちが夜に、想いを寄せる女性の家の前で手作りのこの笛を吹き、音色を捧げたと伝えられる。
素材はアロマティック・シダー(米杉)、ウォルナット(胡桃)、バーチ(樺桜)、ジュニパー(西洋杜松)などが用いられる。
Ryoheiが愛用するインディアンフルートも手作りだ。赤松の材で作った。
(2012年2月)
友枝良
インディアンフルートは、角材を二つに割って、それぞれ内部を丸くくり抜いて、リード部を作り、元通りに貼り合わせ、外部を丸く削って成形する。その後に指穴を開ける。
メーカーや数少ない愛好家は、それらの工程のほとんどを機械でやってしまうようだ。が、Ryoheiはすべて手作業で作った。市販品をモデルにして図面を引き、ノコギリ、ノミ、カンナ、小刀、彫刻刀だけで仕上げた。
接着剤はにかわを使った。ワックスはくるみの実を砕いて絞って油を採り木蝋と練り合わせ、ハーブエッセンスを加えて作った。
手作りの天然素材だけで作った笛を吹く体験は、原生林に分け入る体験と似た感覚がある。
2号機は外部成形にペーパーを使わず、カンナだけで仕上げた。ちょうどその頃感銘を受けていた飛鳥時代の建築手法に近づきたかったのだ。ワックスもかけていない。
オカリナでもインディアンフルートでも、ピッチを正確に仕上げることは最大の難関のひとつだ。音色と違い、ピッチはごまかしがきかない。
写真は、初めて作った1号機のピッチがねらった440Hzにぴたっと決まった瞬間。奇跡だ。
インディアンフルートのリード部には、バードと呼ばれる取り外し式の気流調節機構が備わっている。これがこの笛の最大の特徴だ。バードの微調整は、音色作りの要と言っていい。
Ryoheiのインディアンフルート作りは、市販のインディアンフルートに手製のバードを付けることから始まった。いろんな木の廃材で作ったが、ヒノキ、桜、そして意外なことにラワンがいい音が出た。桜のバードは、枝の皮をそのまま生かして仕上げた。やわらかい音色だ。
一本の木の笛が、この魂と大地を繋いでくれる。
インディアンフルートを吹くときは、もっぱら即興演奏をしている。今このとき自転し太陽系を周回する地球に立ち、時計時間を離れ、時々刻々姿を変えるこの世界の有様を、行く雲のようにリアルタイムで表現したい。
インディアンフルートの基本音階は5個の音だけでできている。が、それらの間に秘せられた音も解き放ち、あるがままに笛を奏でたい。それらの音の配列は、円環状に回り続ける無限の時間、永遠の世界を取り戻すために吟ずる詩でありたい。その音色は、永遠に花開き続ける生命圏の香りでありたい。
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